*第12回都民塾のご報告*

2013年11月21日(木)中央区築地本願寺講堂

第12回都民塾(呼び掛け人 立石晴康・東京都議会議員)が、平成25年11月21日(木)午後7時から中央区の築地本願寺講堂で、石郷岡建氏(毎日新聞外信部OB、「メディアウオッチ100」同人)を招いて開かれた。今回のテーマは「素顔のプーチン大統領と日本外交」。石郷岡氏はロシア、中東、アフリカなど国際政治の研究者で、とくにのプーチン大統領率いるロシアの動向分析に定評がある。北方4島の領有をめぐってわが国と対峙するロシアは何を考え、日本外交はどうあるべきか、をパワーポイントの映像を駆使して鋭く説いていただいた。
まずプーチンについて。1952年10月7日、レニングラード市生まれ。少年時代は不良少年だったが、柔道に出会ってワルから抜け出た。歩き方は今でも柔道のスリ足だ。母は父に内緒で幼いプーチンに反主流派のロシア正教分離派の洗礼を受けさせた。分離派はロシア社会では異端とみられ、ロシア革命も分離派が推進したといわれる。非常に反抗心が強く、西欧を否定する姿勢が分離派にあり、これがプーチンの根底にある。
彼の基本的な考え方を要約すると、「最も重要なことは国家を守り維持すること(強烈な国家主義者)」「実現性のうすい理想や理念は語らない(冷厳な現実主義者)」「ロシアは欧州文化の一部だが欧州のワクにおさまらず、欧州とアジアにまたがる大陸国家としての生き方がある(新ユーラシア主義)」。
そのプーチンのロシアはどこに向かうのか。収入源の原油価格が頭打ちの状況下、その販路拡大と著しい人口減対策として、プーチンは2010年、極東地域の大規模な開発計画を打ち出し着々と実現している。その主なものは、ロシアの西部と東部が初めてつながったハバロフスク―チタハイウエイ(ユーラシア横断道路)、東シベリア・サハリンなどの石油・ガスパイプラインの敷設、液化天然ガス工場の建設など。さらに南北朝鮮半島を縦断するガスパイプラインや鉄道の建設、シベリア鉄道の近代化、ネヴェルスキー(間宮)海峡横断橋などの計画が目白押し。その背景にあるのは、長く国境を接する中国東北三省の大きな人口圧力だ。シベリア・極東地域の人口は年々減少して2555万人に対し、中国東北三省は内モンゴルを含めてロシア全人口に匹敵する1億3000万人以上だ。このまま放置すれば、シベリア・極東地域は中国の人口圧に飲み込まれる恐れがある。プーチンはそうした対中国への大きな戦略としても極東開発に力を入れているわけだ。
わが日本は、北方4島の領土問題で「違法占拠だから島を返せ」とばかり言っているが、それだけではロシアは決して返さない。ロシアにとって死活問題である中国をめぐる戦略対話(連携)に、日本が乗れば返す可能性は大きい。大陸国家で長期的な戦略に長けているロシアと、海洋国家で短期的にしかモノが見えない日本との違いは大きい。日本外交に欠けているのは中長期的な戦略性だ。