*第16回都民塾のご報告

2014年3月29日(土)中央区築地本願寺講堂

第16回都民塾が、平成26年3月29日(土)午後2時から、東京・中央区の築地本願寺2階講堂で開かれた。元NHK記者の石岡荘十氏が「心臓病で死なないために」と題して講演。自ら心臓手術を2度したという話はリアリティーに富み、肯くことが多く100人の参加者は熱心に耳を傾けた。
石岡さんは、1935年、京都市生まれ。早大第一法学部卒業後、NHK入局。東京報道局社会部記者、東京報道局編集センター部長など歴任。著書の「心臓手術~私の生還記~」(文藝春秋刊)は作年5月に絶版に。全国の公立図書館には置いてあり、ネットのアマゾンで1円で買うこともできるという。
 2度の手術から話し出した。「1回目は、63歳のときで無事生還したら友人から『どうだった』と質問攻めだった。全身麻酔だったし自分の体に何が起きたのかわからなかった。そこで、本にしようと調べ出したが、医学は調べるほど難しい。手術の進化は日進月歩で、出版まで4年かかった。
2度目の手術は昨年の2月6日だった。年末年始に宴会が続き、胃潰瘍になった。胃から血が出て体内の血が3分の2しかなくなった。腎臓や心臓に血が行かなくなって腎不全、心不全を併発した。東京女子医大で手術した。毎日、便はよく見るべき、胃潰瘍は排便でわかる。
 日本人の3大死因(2012年)は、①がん29%②心疾患16%③肺炎10%④脳疾患10%。心臓病には、生活習慣病のひとつで、①虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)②不整脈③先天性心臓病④心臓弁膜症がある」。狭心症と心筋梗塞について、心臓の断面図などを使いながら心臓の機能や手術に関して詳しく説明。「狭心症は、血管が狭まり血流が一時的に少なくなる。血管がつまるのが心筋梗塞。発症したら①バイパス手術②カテーテル治療の2つがある。前者は胸を開き、後者は2泊3日で帰れる」
 自身の2度目の手術を詳細に話した。「手術前、予測死亡率を示された。死亡率は40%で、後遺症の残る率は80%でした。手術は9時間。僧帽弁を人工弁に取り変える手術とバイパス手術を一緒にやって、助かりました。バイパス手術では、名医といわれる先生は死亡率は1~2%で、いい医者にかかるのが肝要。
 ニューヨーク心臓協会が定めた心不全の症状を4つに分類した『NYHA分類』があります。Ⅰ度は50歳になると多く、Ⅱ度の段階でいい医者を見つけておく必要があります。それには、いい医者のいる病院を見つけ、診察券をもらっておくこと。いざというときに、その病院は診察や手術を断れません。
 心臓病の危険因子は、①高血圧②脂質異常③喫煙④高血糖があり、これに肥満、食事、運動不足、ストレスが加味されます。脳梗塞には、生死を分ける『FASTの法則』がある。Fase(顔)、Arms(腕・指)、Speech(話せるか)で、『Time to call』(一刻も早く)が求められます。4時間以内に病院に行けば、いい薬(t-PA)があるので後遺症も出ません」
 最後に「心臓病で死なないために」の極意として①いい病院②いい医者(心臓血管外科医)③受診・治療のタイミングをあげた。そして、「いい病院・いい医者をどう選ぶか」について、「①年間100例超の心臓手術を行っている病院、②心臓外科手術の専門医がいる病院、全国に専門医は1900人いるが、ゴッドハンドといわれるのは10人ぐらい。年間400件手術する天皇陛下の執刀医の天野篤先生もメールで診療を受け付けている。どんな名医の治療も受けられる体制にあるが、コネも大事だ」
最後は「心臓病になるのは、本人だが家族の心労は並大抵ではない。心臓病で死なないためには、いい病院、いい医者、治療のタイミングに尽きる」とまとめた。質疑応答では、「ここ中央区で、いい病院はどこですか?」といった地元ならではの質問にも石岡さんは丁寧に応えていた。