*第25回都民塾のご報告

2015年1月28日(水)中央区築地本願寺講堂

今年初の第25回都民塾が、平成27128日(水)午後7時から東京・中央区の築地本願寺二階講堂で、明海大学経済学部准教授・慶應義塾大学講師の金子 光(かねこ みつや)先生を講師にお招きして、「オリンピックに向けた都市の創生-2020年の先に見える新たな日本-」をテーマに開かれた。

金子先生は、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了、専門は財政学・公共政策。公共選択学会幹事・地域マネジメント学会理事のほか、参議院客員調査員・外務省政策評価調査官・山武市行政改革推進委員会会長代理・秋田市事業評価会評価員などとして活躍している。行財政改革や東京五輪(2020)の政策課題についても論文を執筆している。

金子先生は、最近起きている政治・経済の事象から話し始めた。衆議院総選挙(平成26年12月)とイスラム国人質事件(平成27年1月)をTime Inconsistency(動学的不整合性)やピーク・エンドの法則、ゲーム理論など様々な視点から分析した。新聞・テレビなどマスメディアの一面的な捉え方と違って、政治の現象を経済理論から説き起こすなど、ユニークな分析は説得力があり圧巻だった。

本題の東京五輪では、BRT(Bus Rapid Transit)の導入など東京五輪に関連する政策課題について、国・東京都・中央区・晴海地区将来ビジョン検討委員会などの多様なアクターの重層的な構造および相互の複雑な連携・調整の関係について分かりやすく解説した。

また、金子先生は東京都がとりまとめた「選手村 大会終了後における住宅棟のモデルプラン」(平成26年12月)について熟慮を重ねる必要性を説いた。モデルプランでは、晴海の選手村に板状の住宅棟22棟や超高層タワー2棟、商業棟1棟を建設する計画だが、国際交流の拠点をめざすという観点から、レガシーとして留学生のための寮や学術文化施設なども考慮することが良いのではないかという意見であった。

さらに、金子先生は「ジャムの法則」を紹介しながら「モデルプランも複数の選択肢を提示し、議論を重ねることでひとつにまとめていくことが望ましい」と述べた。東京五輪に向けた取り組みの現状と今後の課題について、過去最高の100名を超える参加者は頷きながら熱心に耳を傾けた。

話の間に挟む歴史上の人物らの言葉が面白く、白眉だった。以下のように次々に話題に合った言葉を発した。

「ドイツ帝国の宰相ビスマルクは、『鉄道は権力である』と言った」。晴海と都心とのアクセスについてはBRTの導入が進められているが、「五輪後も視野に入れて、地域の特性を踏まえた対策が求められている」

「哲学者のシュペングラーによると、『世界史は都市の歴史』である」。「東京五輪は、ひとりひとりが未来からの視点で考え、意見を出していくことが求められている」、「地域と超地域的な利益のバランスをどのようにとっていくかも焦点になる」と話した。

講演後の質疑応答では「『足による投票』の観点から晴海の人口増加をどのように想定しているのか」「東京都のモデルプランのように選手村に超高層タワーが建設されることによる長期的な問題は何か」といった議論が続出した。
目標を共有し参加者ひとりひとりの東京五輪(2020)への問題意識がひときわ高まった。