*第31回都民塾のご報告

2015年8月19日(木)中央区築地本願寺講堂

第31回都民塾(呼び掛け人 立石晴康・東京都議会議員)が、平成27年8月19日午後7時から中央区の築地本願寺講堂で、尺八のき乃はち師匠を招いて開かれた。き乃はち師匠は、「呼吸と尺八」をテーマに「洒脱で丁寧な」トークと「幽玄で力感あふれた」尺八で出席者を魅了した。

き乃はち師匠は、1971年、東京・根岸生まれ。祖父は、琴古流尺八の名人、佐藤錦水で、4歳から尺八を吹き始める。若手奏者として注目を浴び、北南米ツアーで海外に衝撃を与える。洋楽とのコラボ、歌舞伎の演奏などでも知られる。
「尺八は雅楽として日本に入り、最初に吹き始めたのは聖徳太子です」と尺八の歴史から入った。「鼓吹」を「息を深く吸って吐き切る、吐いた息で音を出し、新しい生命を感じることです」と説明。「現代人は息が浅い。吐き切らないと生命を感じられない」と話した。
「一音の中に魂、気持ちを込めて吹く」の意の「一音成仏」が最高のテクニックだという。最初に『宙(そら)へ』を奏じた。「この曲は、毎年8月、特攻隊基地のあった鹿児島の知覧で吹きます。最高に自分と向き合った特攻隊員を前に自分を見つめ直す場でもあります」
尺八といえば虚無僧。「虚無僧は出会ったとき、話をせず曲を吹いて挨拶します。20歳のとき、虚無僧の姿で京都から鎌倉まで歩きました。見ず知らずの人に食べ物をもらったり人の有難さを知った。天蓋から世の中が見えました」
「間(ま)」について話した。「40年間吹いてきておぼろげ見えてきたものがある。吸って吐いて・吸って吐いて、では間がない、吸って・止めて・吐く、だと間がある。止めすぎると間延びする。自分意思をコントロールして聞いてもらうことが間だとわかり、これを意識して吹いている」

海外の尺八ブームを語った。「先日、フランスであったジャパンフェスティバルで演奏した。24万人が集まり、フェスティバルは大いに盛り上がった。また、チェコで開かれる尺八の会にはヨーロッパ中から3000人も集まる。東京芸大の尺八の受験者は1人、自分が頑張らないと思っている」
こう続けた。「日本の文化は次の世代に残していく必要がある。子殺し、親殺しの起こる、いまの時代を、知覧の特攻隊員はどう思っているだろうか。尺八を通して、若い人、若い親御さんに日本のいい部分を伝えていきたい」
歌舞伎との関係にも触れた。「市川染五郎さんは歌舞伎を若い人に見てもらいたいと努力している。彼から頼まれ新作歌舞伎の音楽をつくった」と、陰陽師の『月光波』を演奏。トークの間に6曲を演奏、大きな拍手が会場を包んだ。
最後を、「文化は1回消えると復活に100年かかる。尺八も消えかかっている。自分はつなぎ役だと思って、これからも大事な文化を伝えていきたい」と結んだ。
 質疑応答でも、き乃はち師匠は、尺八と洋楽の五線譜、街から音の消えた現代、型と形の違いなどについて解説。出席者は感動し、肯くばかりだった。