*第34回都民塾のご報告

2015年12月22日(火)中央区築地本願寺講堂

第34回都民塾(呼び掛け人 立石晴康・東京都議会議員)が、平成27年12月22日午後7時から中央区の築地本願寺講堂で、産経新聞前論説委員長の千野境子さんを招いて「日本は近隣諸国とどう付き合うか?」をテーマに開かれた。千野さんは2度目の講演。


千野さんは、1967年、早大文学部ロシア文学専修卒業、同年、産経新聞に入社。マニラ特派員、ニューヨーク支局長、外信部長、論説委員などを経て2005年から2008年まで論説委員長・特別記者。 98年、一連の東南アジア報道でボーン上田記念国際記者賞を受賞。
千野さんは、「近隣諸国」の概念から話し始めた。「中国、韓国を含み、北東アジア、東南アジア、オセアニア、南西アジア、中央アジア、そして国連のアジアの枠組みで中東も含まれます。このように海を絆にした隣人は、ますます重要になっている」
 東南アジアについては、「東南アジアは戦後の新しい言葉で、かつては南方、南洋と言った。一般的になったのは、第2次大戦で東南アジア総司令部(South East Asia Command)が出来てからで、日本は1955年のバンドン会議で東南アジアに戦後復帰の第一足を記した」


 日本との関係について、「1977年の『福田ドクトリン』(日本は軍事大国にならない、政治経済だけでなく文化、心の交流を行う、対等のパートナーの3原則)が絆となった。40年経ったが、日本とASEANは近づいただろうか。第一次世界大戦でドイツの植民地が日本の統治下になり、東南アジア諸国の独立運動を支援するなど人間の交流が密だった」
 ASEAN(東南アジア諸国連合)を解説した。「1967年に5カ国で発足、現在10ヵ国が加盟。二度と植民地にはならない、お互いに争わない、の2つをテーゼにしている。ひとつひとつは小さいがまとまると大きい、というのが強みとなっている」
「NATO(ノー・アクション・トーク・オンリー)と呼ばれることもある。難しいことは、もう少し考えようというスタンス。GDPは合わせると世界7位、人口は6億人強でEUと変わらない。多国間の集まりでは、『車の運転席に座る』、敵がなく強大でないのがそうさせている」
2015年発足のASEAN共同体については、「EUのようになるかどうかだが、経済、政治・安全保障、文化の3つの共同体の概念があるが、経済中心に『戦場から市場へ』で発展してきた。シンガポール、インドネシア、タイなどは、それぞれの国の特長を出してきている。中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)を通じて、この地域でリーダーシップを取ろうとしている。日本はパートナーとしてどう付き合うかが問われている」
インドネシアの高速鉄道建設が中国に敗北したことに触れ、「日本人がいいものと思っていることが必ずしも世界共通ではない。相手の事情を考えるべき。中国の膨張政策で米中の衝突がないよう、日本はASEANを取りこんで力を発揮する知恵が求められている」
 千野さんの講演は約1時間行われたが、そのあと、多くの質問が出て質疑応答も1時間近くになった。千野さんは質問に丁寧に答え、有意義で充実した講演会となった。