*第9回都民塾のご報告

2013年8月31日(土)築地本願寺講堂

第9回都民塾(呼び掛け人 立石晴康・東京都議会議員)が、平成25年8月31日(土)午後2時から中央区の築地本願寺講堂で、土屋繁氏(毎日新聞政治部OB、「メディアウオッチ100」同人)を招いて開かれた。今回のテーマは「なぜ今、江戸城天守再建なのか」。土屋氏は認定NPO法人「江戸城天守を再建する会」理事で、5年前から取り組んできたこの再建運動の経緯、再建計画の概要、そしてその今日的な意義などについて以下のように熱く語った。
そもそも江戸城は6度もその主を変えた。5度目の主の徳川家により江戸時代当時の最高水準の建築技術を結集した、天守(天守閣という言葉は明治期以降の呼称で、学術的には使用しない)を持つわが国最大の巨城へと発展した。ところが、1657(明暦3)年の振袖火事で、寛永年間に建設された「寛永度天守」が消失し、これ以降現在まで360年間、天守は再建されないままになっていた。
そこで、2006年にわが国が「観光立国推進基本法」を制定し、「観光立国」の実現に動き出したのを機に、この「寛永度天守」を首都東京の日本文化のシンボルタワーとして再建する運動がスターとした。
再建を目指す江戸城寛永度天守は、通し柱を利用した木組みの柔構造による耐震・免震技術で造られ、日本で最も壮大で美しい木造建築の最高傑作。法隆寺五重塔や姫路城なども同じ技術が採用されており、この通し柱を利用した技術は、地震国日本が誇る耐震建築技術の基礎の一端を担ったものだ。
従って今回の再建は、コンクリート造りではなく、当時の技術を使った木造建築により忠実に当時の姿を再現することにした。計画では2020年ごろに皇居東御苑の北端にある天守台上から築城工事を始める予定。天守までの高さは天守台(約13㍍)を含めると約58㍍、20階建てビルに相当し、標高は78㍍になる。1階部分は6畳間130室分(784畳)で、天井高約8.5㍍と姫路城の2倍以上だ。
明治9年に来日したフランス人実業家、エミール・ギメは『日本の開国』(創元社)によると、こう言っていたという。
「日本は想像していた以上の夢の国だった。しかし日本人は日本の風俗に充分な自信を持っていない。彼らの力となり、幸せの基となる習俗、制度、思想まで、彼らは余りにも早く捨て去ろうとしている。恐らくそれを取り戻す時が来るだろう。彼らのために、そうなることを願っている」
歴史的建造物の再建は世界の潮流。私たちの夢は、わが国が育んできた、世界に類を見ない魅力的な伝統と文化を、国を代表するシンボルを、江戸城寛永度天守の再建で取り戻したいということ。今、まさにそのときだ。
皇居を管理している宮内庁との調整、建築資金の問題など課題は山積しているが、まずは再建運動を全国的な規模に拡大し、国民運動にすることが重要だ。粘り強く取り組んで行きたい。ご理解、協力をお願いしたい。