*第11回都民塾のご報告

2013年10月26日(土)中央区築地本願寺講堂

第11回都民塾が、平成25年10月26日(土)午後2時から中央区の築地本願寺第二伝道会館で、金子 光(かねこ みつや)先生(明海大学准教授、慶應義塾大学講師、専門:財政学・公共政策)を招いて開かれた。テーマは「東京五輪(2020)と政策課題」。
金子先生は、東京大学大学院経済学研究科博士課程を修了、公共選択学会幹事・地域マネジメント学会理事・参議院客員調査員・外務省政策評価調査官を務めるなど政府や東京都、中央区の政策課題などにも精通している。
金子先生は、冒頭、「小中学生のとき、八丁堀と人形町にある進学塾に通い、中央区に親しみがある。子どものときに見た原風景がオリンピックに向けたまちづくりのなかで、これからどのように変化していくか見ていきたい」と語り、講演に入った。
はじめに、都民塾の大きなテーマである「今、日本で何が起きているか」について、アベノミクスの経済学的分析・消費税増税などをわかりやすく説明した。行動経済学に関して、「夕食を食べる時、A(今日:普通の食事、明日:高級な食事)にするか、それともB(今日:高級な食事、明日:普通の食事)のどちらを選択しますか?」と挙手を求めた。
Aが多かった。「これは行動経済学に基づいた回答です。人間は、今日よりも明日により効用の高いものを求める傾向があります。こうした心理でマーケットも動きます」と話し、それを消費税増税の話につなげた。
「消費税率は20144月から8%になりますが抵抗が少なく決まりました。かつて消費税増税ではものすごい反対がありましたが、なぜ今回は抵抗が少なかったのでしょうか? 増税だけでなく、社会保障と税の一体改革であったことが重要であったと考えられます。これも行動経済学に基づいて考えることができます」
2020年の東京五輪については、1964年の東京五輪との比較から話し出した。「前回は、敗戦から立ち直って世界の仲間入りをするという『戦後からの脱却』をめざしていました。今回は、立候補ファイルでのキーワードに『持続可能な発展』があるように、2020年の後をどうするか、その先を見据えることが求められています。
地域においては、社会資本の整備や若者が集い地域が活性化するなどのプラス面と、伝統文化の衰退や治安の悪化といったマイナス面も指摘されています。長期的な視点に立って、街としてどのように発展していくか、街の特徴に合った五輪をみんなで一緒に考えていくことが求められています。
中央区も東京オリンピック・パラリンピック対策特別委員会を設置。晴海にできる選手村と都心とのアクセスなどの検討を始めました。交通手段として、BRT(Bus Rapid Transit)やLRT(Light Rail Transit)などが挙げられています。2020年までに導入するという実現可能性を考慮するとともに、中長期的な視点からレガシーとして何が望ましいかを考える必要があります。
先日、区内を歩いていたら、八十歳代の女性から、『この辺は、昔はもっとたくさんのお店があったんですよ。景色が変わってしまったわ』と話しかけられました。原風景を思い出すような話を伺って、改めて2020年に向けたまちづくりについて考えるきっかけになりました。
1964年の東京五輪の際、東京都のオリンピック準備局長は、『徹底的に議論し、何人(なにびと)にも納得できる最良の五輪にしたい』と言いました。2020年の五輪は、『持続可能な発展』をスローガンに、伝統・文化を後世に残し地域の人々が描く原風景を大切にするとともに、晴海が国際交流の拠点となるようなまちづくりに世代を超えてみんなで一緒に取り組んでいきたい」
講演後の質疑応答では、いつもの倍以上のたくさんの質問が出たが、金子先生はひとつひとつに丁寧に説明された。