*第41回都民塾のご報告

2016年9月29日(木)中央区築地本願寺講堂

第41回都民塾(呼び掛け人 立石晴康東京都議会議員)が、平成28年9月29日午後7時から中央区の築地本願寺講堂で開かれた。
          
今回は、観世流能楽師 の中村 裕(なかむら・ひろし)先生をお迎えして、「わかりやすい能の楽しみ方」の演題で開かれた。           
「来春、銀座に観世流能楽堂が完成、東京オリンピック・パラリンピックを4年後に控え、あわせて良い機会だと思います」(立石都議)
            
中村先生は、昭和22年3月12日生まれ、 故二世梅若万三郎師と三世梅若万三郎師に師事。重要無形文化財総合指定者として、能楽の普及に努め、昭和61年から「中央区能に親しむ会」主催している。


 
中村先生は、能と狂言の歴史から入った。「6世紀に中国から雅楽と民間芸能の散楽が伝来。散楽が徐々に広まり、日本の様々な芸能、踊り、歌と混ざり合い能の原型ができ、室町時代、観阿弥、世阿弥親子によって能が完成。狂言も散楽の系統を継ぎ、滑稽なものは狂言として、歌や舞は能として形態を確立しました」
 
能と狂言の違いを、「能は義経、弁慶を物真似で見てもらったり、笑いがなく堅苦しいといわれます。狂言は狐や狸の物真似で笑いをとり、動きのある落語ともいわれています。狂言には、本狂言と能の中に登場する間狂言があります」
 


続いて、能の役割(登場人物)を説明した。「シテ方は、シテ(主人公)、ツレ(シテの助演者)、後見(演者の手助けをする役)、地謡(合唱)からなり、これにワキ方、狂言方、笛や鼓の囃子方がいます。シテ方には、観世流、金春流、宝生流、金剛流、喜多流の5つの流儀があります」
 
中村先生は、能の様々な映像を見せながら、「能は、世界で一番古い舞台芸術です。能の物語は、主人公であるシテの役柄によって①初番目物(神様がシテ)②二番目物(武将の亡霊がシテ)③三番目物(女性がシテ)④四番目物(狂女や唐人がシテ)⑤五番目物(人間以外の鬼、天狗、妖精などがシテ)に分類されます」
 
能面については、映像を見せながら説明するとともに、実物も見せてリアルに解説した。「能面のように無表情、とよく言いますが、舞台の上で、能面の向きを変えることによって、悲しそうな顔になったり、光の加減で笑って見えたり、様々な表情を見せることができます」という話は新鮮に映った。
 
能の装束を見せて説明したあと実演も披露してくれた。小鼓(こづつみ)を肩にかけて、謡をうたいながら「ポン。ポン」と小鼓を打つ音が会場に共振する。続いて、中村さんの謡、息子さんの舞で「芦刈・笠之段」を実演。その華麗さ、そして圧倒的な迫力に出席者は気圧された。
 


最後に、「よわいをさずくる-。このき-み-の-。ゆくすれまもれと。わがしんたくの…」と謡「老松」を中村先生の指導で、出席者全員で奏でた。中村先生親子の能の実演が見られるとあって、この日の会場は正面前方座席から埋まった。
 
普段は政治経済といった硬い講演が多い都民塾だが、この夜は、「能~夢の一刻の物語~」に出席者は、時間のたつのを忘れて酔いしれた。