*第44回都民塾のご報告

2016年12月27日(火)中央区築地本願寺講堂

平成28年最後の第44回都民塾(呼び掛け人・立石晴康東京都議会議員)が、12月27日(火)午後7時から中央区の築地本願寺講堂で開かれた。
          
今回は、声楽家の佐々木菜穂子さんが「日本の唱歌とオペラの素晴らしさについて」と題し、昔なつかしい文部省唱歌を中心に美声を披露しながら曲の背景などを話した。           
佐々木さんは東京都出身。東京芸術大学声楽科を卒業後、スウェーデンをはじめ欧州、アジアなどでツアーコンサートを開催。           
最近も台湾で日本の名曲を台湾語と日本語で熱唱し、大喝采を浴びた。現在、大学の同期生と月島歌劇団を立ち上げ、オペラやクラシックの普及に取り組む。
 
黒とシルバーのツートンカラーの衣装ドレスに身を包んだ佐々木さん。「皆さんがご存知の曲も多いので、ぜひ、ご一緒に」と参加者に呼びかけると、さっそくオープニングソングの滝廉太郎の「花」を、月島歌劇団専属ピアニストの大橋響子さんの伴奏で熱唱。
「この曲は日本歌曲の第一号ですが、音楽の西洋化は明治時代から始まり、当初は曲のみ輸入し、翻訳唱歌を歌わせていました」と解説。
その例としてドイツ民謡を訳詩した「蝶々」、スコットランドの曲に紫式部や清少納言の才女ぶりを歌った「才女(アニーローリー)」、作詞は哲学者ルソーといわれる「見わたせば(むすんでひらいて)」の3曲を披露。           
 
明治12年、のちの東京音楽学校、芸大へと変わる「音楽取調掛」が制定された。
「日本人の作曲による日本人の唱歌を国民音楽として定着させる」との目標が掲げられ、そこから生まれたのが文部省唱歌。
佐々木さんのトーンも急上昇し、ここから唱歌のオンパレード。「春が来た」「春の小川」「朧月夜」「茶摘み」「われは海の子」「もみじ」「虫の声」「冬景色」「雪」を一気に歌った。
 
唱歌は国が作った曲の色合いが濃く、歌詞が変更され美辞麗句に陥ってきた。
これに対抗するように大正7年、子供自身の芸術性や情緒を育むための童話・童謡を広める赤い鳥運動が鈴木三重吉によって始まった。
その代表曲「かなりや」を歌った佐々木さんは、「歌を忘れた・・・」の詩の如く「唱歌しか教えられない子供のことを歌ったメッセージ性のある曲」と指摘した。
 
この後も名曲の熱唱が絶え間なく続いた。まずは童謡詩人の三巨匠の一人、野口雨情特集。「証城寺」「兎のダンス」「青い眼の人形」「あの町この町」「雨降りお月様」「こがねむし」「赤い靴」「七つの子」「木の葉のお舟」「シャボン玉」「十五夜お月さん」「波浮の港」。
次いで台湾の曲「望春風(バンツゥンホン)」「雨夜花」、大橋さんによる「さくらさくら幻想曲」のピアノ独奏、さらに大正時代の浅草オペラの名曲「恋は優し、野辺の花よ」「ハバネラ」を披露。
最後に日本橋蛎殻町出身の藤山一郎の昭和歌謡「東京ラプソディ」と「ふるさと」を参加者全員で手拍子を取りながら大合唱。
続いて野口和久・代表世話人の小中学校の同級生、高橋司さんが自作の漆塗りの小型ヒョウタン約10個を参加者にプレゼントする“おまけ”もあり、歌曲づくしの年末都民塾は大盛会のうちに終了した。