*第55回都民塾のご報告

2018年1月25日(木)中央区築地本願寺講堂

第55回都民塾(呼び掛け人 立石晴康前東京都議会議員)が、平成30年1月25日(木)午後6時半から中央区の築地本願寺講堂で開かれた。
          
今回は、元駐インド大使・駐仏大使等を歴任された外交官の平林 博先生が「凛とした国のかたち―ブランド国家フランスからの教訓―」をテーマに講演した。
 
平林先生は、日印協会理事長・代表理事。1963年東京大学法学部卒業、外務省入省。在外公館では、イタリア、フランス、中国、ベルギー、および米国に勤務。本省では、官房総務課長、経済協力局長等を歴任。『フランスに学ぶ国家ブランド』(朝日新聞出版)、『最後の超大国インド』(日経BP社)など著書多数。
 
最初に、「国のかたち」について「国のかたちには、ブランド=品格がある。それを決めるのは、実質面では、人間力、経済・科学技術力、文化力、防衛力で、イメージ面では、国のブランド力を訴求する力だが、日本はこれが不十分だ」           
人間力について「人口の確保=量が大事で、少子化対策で妊婦への補助金など何でもやったフランスに学ぶべき。日本は、外国人の受け入れは慎重に行うべきだ。人間力の質の確保では、誠実で勤勉で時間を守るという日本人の質の高さ、東日本大震災で世界を感心させた助け合いの精神を忘れてはいけない」
 
経済・科学技術力について「GDPは、日本は米国、中国に続き3位だが、いずれ4位になる。科学技術力では、中国は、博士論文数で米国を抜いて世界一になるなど躍進しているが、日本も経済・科学技術力を持ち続ける必要がある」           
一番言いたいという文化力について「フランスは、経済、科学技術、軍事力も一流だが、文化、芸術で輝いている。創造する力も外から持ってきて咀嚼する力もある。シャンゼリゼ、セーヌ川両岸など中世からの景観が保たれている。都市だけでなく村=田舎が綺麗で美しい。この文化を守るのが文化の殿堂である学士院だ。文化予算も日本の10倍近くある。フランスを教訓に、学んでほしい」
            
続いて、「平和主義」を語った。「日本ほど安全で平和な国はないが、平和を当然視して平和ボケしていないか。尖閣諸島をめぐる中国、核開発の北朝鮮の隣国として防衛力、抑止力は必要だ。日本の国のかたちを守るためにも、一国平和主義(消極的平和主義)ではなく、積極的平和主義が求められる」           
国家ブランドを向上させるためには「国際社会で日本の立ち位置を発信し続ける国際的発信力と首脳外交の時代、首脳外交力が国運を決める。安倍首相は、歴代首相のなかでも、この2つを備えていると思う」と結んだ。平林先生の外交官としての見識、その間に培った国家観に基づく講演に参加者は熱心に聞き入った。
          
最後に、都民塾が協力して7月に築地本願寺で開催する「アートコラボレーション・イベント」を主宰するフランスからレジオン・ド・ヌール勲章を授与された松井守男画伯が「経済だけでなく絵画という芸術分野でも日本人は頑張っている姿を、中央区から世界に発信したい」と挨拶。大きな拍手を浴びた。