*第63回都民塾のご報告*

2018年10月25日

第63回都民塾(呼び掛け人 立石晴康前東京都議会議員)が、平成30年10月25日午後6時半から中央区の築地本願寺講堂で開かれた。
 
今回は、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)東京支局記者、フレッド・ダボアさんを招いて「ベンチャー投資・企業の実態」などについて話を聞いた。
 
今回の講師は、WSJ東京支局長のピーター・ランダースさんを予定していたが、同氏が急遽、安倍首相の中国訪問に同行することになったためダボアさんがピンチヒッターで講演した。
 
ダボアさんは、WSJアジアシニア特派員。1984年エール大学卒、Cal/ UCバークレー校修士課程修了(ジャーナリズム、アジア研究)。1999年にWSJ東京支局に入社。主に経済・テクノロジーなどを中心にアジア全体をカバーしている。
 
イノベーションを支える世界のベンチャー投資から話し出した。「投資の金額、1回当たりの投資額とも増大している。国別では、1992年は米国がほとんどだったが、昨年から大きく変わった。米国が44%で、中国などアジアが40%と同じになった。投資先は中国にシフトしている」と語り、ユニコーン(企業評価額が10億ドル以上の非上場のベンチャー企業)に言及した。
 
「米国では上場企業が減り、投資のカネがプライベートマーケットに流れるようになった。携帯アプリで車を呼ぶウーバーは700億ドル、中国のアリババの金融会社は1500億ドルの企業価値があるが、ともに上場していない。こうしたユニコーンを支えているのが日本の孫正義さんのソフトバンクで1兆円も投資している」
 
「孫さんの投資先は、日本以外の米国、ヨーロッパ、アジアで、『犬の散歩』をする人を捜すアプリの会社に3億ドルも投資した。金はサウジアラビアやUAEからで、サウジの皇太子の一件は米シリコンバレーでは問題になっている。孫さんは20年前は金が動機だったが、今は金持ちで、自動運転の未来図を描いている様にみえる」
 
ユニコーンは現在、中国が多く、大きいという。「イノベーションの軸も中国に向いている。日本は、ソフトバンクという世界一のファンドがあるのに1社しかない。原因は、かつては起業家もいたが、いい大学に入り大企業に入社、企業の中で技術開発するようになってしまった。銀行も起業家には融資しないし、投資家もベンチャーには投資しない。こうした保守的な考えから抜け出していない」
 
ダボアさんは、質問に答える形で続けた。「ユニコーンが上場しないのは、情報開示など面倒くさいし株主も煩いと考えている。企業の拡大を優先、金があるので上場しないで済むと思っている」、「日本は、製造―サービス―輸出―内需拡大で発展したが、中国やアジア諸国も、それを踏襲しようとしているが難しいと思う」。
 
「(ユニコーンの今後について)米国では、もう投資は少し続く。個人的には、非公開の市場なので外からわからず、金持ちしか投資できないので不健康だ。上場企業は、会社でいま何が起こっているのかがわかるので健康だ」とまとめた。数多くの質問が出て質疑応答も大いに盛り上がった。