*第70回都民塾のご報告*

2019年5月30日

第70回都民塾(呼び掛け人 立石晴康前東京都議会議員)が、令和元年5月30日(木)午後6時半から中央区の築地本願寺講堂で開かれた。
今回は、東京空手倶楽部代表の瀧川英治師範を講師に招いて「空手を通して人を育む」と題して講演していただいた。
 
瀧川師範は、長崎県出身。東京空手倶楽部代表。母校の大阪体育大学の講師、同空手部総監督。中央区では子供たちを指導、深大寺空手の会師範など幅広い年齢層に日常生活を豊かにする空手の普及に尽力している。
最初は、瀧川師範の弟子、国際基督教大学の学生、菅谷麻衣さんによる空手の演武。「クーシャンクー」という掛け声とともに手を突き、足を突き上げ、「ハイ」という裂帛の気合。型の切れのいい動きと空手着の衣擦れの音に気圧された。

 
「空手は生活の軸になっています。空手を通じて学ぶことが多い。私自身を成長させるものでもあり、毎日、練習に励んでいます」という菅谷さんの談話の後、瀧川師範が「空手は空気を相手にします。道場に入るときは、(役者が)舞台に立つような気持ちです」と話し出した。
 
「空手は明治後期から昭和初中期に完成した新しい競技です。現在、世界180か国に1億人の愛好者がいます。1964年に柔道が五輪種目になり、2020年に空手も五輪の正式種目になりました」と歴史から入った。
 
「空手はプロレスや格闘技のイメージがあるが、空手に先手なし、と言われるように相手を打ったり、殴ったり、攻撃しません、ケガをさせてはいけません。寸止めという技術の習得が基本です。相手の突きの攻撃には、押さないで必ず引きます。引くというのは、相手をはじく動作です」
 
空手を説明した後、不祥事の続いた大学スポーツについて、「学生の問題ではなく、大学本体、経営陣の問題だと思う」と、大体大空手部総監督の体験を語った。
 
「監督になった当初、道場の入口の履物はバラバラで乱れていた。注意しても直らず、自分で履物を揃え、『俺が並べ替えておいたから』と言ったら、その後は学生たちで揃えるようになった。現在は、学生たちで創意工夫して練習するようになり、大会での成績も上がった。私の仕事は練習環境の整備ぐらいです」
 
子どもたちの空手の指導について続けた。「多くの子どもを指導しているが、私は表向き『教えません』。今の子どもは空手着も親が着せてくれるので自分でできない。私は、空手着の畳み方から教えます。できない子どもには2度目にきつめに言うと、ほとんどの子どもができるようになります。指導者が、手取り足取り教えるというやり方では、子どもたちも覚えないのではないでしょうか」
 
こう結んだ。「中央区でも子どもたちを教えていますが、空手を通じて、子どもたちが心身ともに健やかに、少しでも社会に役立つよう育ってほしい」
質疑応答では、「空手道」、「空手の各会派」、「空手の型と組手」といった質問が相次いだが、瀧川師範は、ひとつひとつ丁寧に答えていた。