都民塾

都民塾だより No.13

 第13回都民塾が、平成24年12月26日(木)午後7時から、東京・中央区の築地本願寺2階講堂で、音楽家の小畠エマ(こばたけ・えま)先生を迎えて開かれた。「オペラは大人の楽しみ」をテーマに、小畠先生によるオペラの歴史や楽曲の解説とオペラ斉唱を聴いた。これまでの都民塾とは異なり、華麗で優美なオペラを聞く集いに100人の参加者は魅了された。

 冒頭、塾員の藤間あつこさん(東京藝大卒)が、小畠先生のプロフィールを紹介。同時に、「音楽の先進国には、劇場法という法律があって国が劇場の存在意義を認め、運営などを規定しています。日本には劇場法がなく、芸術を通じてアイダンティティーを持てなくなっているには残念です」と劇場論を展開した。

 小畠さんは、東京藝大声楽科卒。イタリア・ミラノ音楽院に留学。ルーマニア国立コンスタンツァ歌劇場で「蝶々夫人」タイトルロールでデビュー。イタリアにおいてモンテプルチャーノ国際芸術祭オペラ出演、第九ほか宗教曲ソロ、コンサートに活躍。帰国後、聖心女子専門学校で音楽教育に携わる。

 小畠先生は、大学、イタリア留学、劇場デビューという自身のオペラ人生を振り返りながら、オペラの歴史から語りだした。「オペラは、1604年、イタリア・フィレンツェで誕生しました。題材は、男女の恋愛を歌い、劇場で子どもは観ることが出来ませんでした。オペラは生の音ですが、ミュージカルは電気を通した声になります」

 はじめに、「創生期のオペラは、ギリシャ悲劇に音楽を取り入れ、朗読が歌になったようなものだった」と話し、1608年の創生期のオペラの一節を歌った。このように、オペラの進化の歴史を解説しながら、その時代の代表的なオペラを歌うという形で進められた。

 オペラはイタリアからヨーロッパに広がった。マリー・アントワネットの時代、オーストリアのモーツァルト(1756~1791)によって大流行した。モーツァルト作曲のオペラ「フィガロの結婚」の「恋とはどんなものかしら」を歌い上げた。

 1700年後半から1800年代は、シューベルト、シューマン、ショパンが活躍、「美しい歌」といわれた時代。ベッリーニ作曲のオペラ「ノルマ」から「清らかな女神よ」を歌った。19世紀は、ヴェルディの時代。彼の作曲したオペラ「椿姫」よりポピュラーな「乾杯の歌」を歌い上げた。

 19世紀から20世紀は、「蝶々夫人」で知られるプッチーニが活躍。写実主義でセリフを重視したという。オペラ「トスカ」より「歌に生き、愛に生き」を歌った。参加者は、ずっと小畠先生の華麗で迫力ある歌声に気圧されているようだった。

 このあと、日本における西洋音楽を解説。「1872年、明治5年、滝廉太郎、山田耕作といったヨーロッパ留学組によってもたされた」。「歌謡曲にも通じる、わかりやすい歌」という「落葉松」(北原白秋作詞、小林秀雄作曲)と「かやの木山の」(北原白秋作詞、山田耕作作曲)を歌った。歌のあと、「日本人って素敵だなと思う」と独白した。

 1時間半、オペラ史を解説しながら、多くの歌も披露し小畠先生。参加者は「わかりやすいオペラの話は勉強になった。何より、声量に圧倒されました」「歌うだけでも大変なのに、解説と歌を同時にするのは凄いこと。素晴らしかった」と、みな満足した様子で話していた。

 このあとの質疑応答では、参加者から「オペラと日本の歌舞伎とは類似性があるのでは?」などの質問があったが、小畠先生は、丁寧に応えていた。最後まで、賞賛の拍手が鳴り止まなかった。

戻る