都民塾

都民塾だより No.14

 第14回都民塾が、平成26年1月30日(木)午後7時から、東京・中央区の築地本願寺2階講堂で、駐日アゼルバイジャン共和国特命全権大使のギュルセル・イスマイルザーデさんを迎えて開かれた。まず、アゼルバイジャンという国について、続いて「アゼルバイジャンから見た日本」について話した。流暢な日本語で、ときにユーモアを交えての講演に100人の参加者は熱心に耳を傾けた。

 金子 光・明海大学准教授からギュルセル・イスマイルザーデ大使の紹介があった。「世界中から留学生が集まる東京国際交流館で2年間一緒で、10年前から開いている勉強会の仲間。コミュニケーション能力が高く、“外交は信頼”を体現しているような方です」

 冒頭、近年のアゼルバイジャンと日本の関係をこう語った。「昨年は素晴らしかった。東京五輪開催が決まったが、前年のドーハ開催はバクー(アゼルバイジャンの首都)で決まった。また、日本の和食がユネスコの文化遺産に決まった会議もバクーで開かれました」。続いて本題に入った。

 「アゼルバイジャンは、1991年にソビエト連邦から独立。アジアとヨーロッパの中間で、シルクロードの通る道にある。1917年のロシア革命後の18年に独立したが20年に赤軍の侵攻で70年間、ソ連に占領された。現在、政治的、経済的にヨーロッパに属している。アゼルバイジャンのユニークな点は、①イスラム社会で最初の民主共和国②イスラム社会で初めて女性参政権を認めた③イスラム圏で、最初にオペラとバレーを公演④1840年に石油を採掘した」

 アゼルバイジャンの現在(いま)を話した。「ソ連占領時代は、ソ連の15共和国のひとつだったが、教育は進んでいた。共産圏のソ連と中国を比較して、中国は経済の自由はあるが、政治の自由がないが、ソ連は経済の自由はないが政治の自由はあった。

 現在、人口は920万人、95%がイスラム教徒だが、政治と宗教は分立している。酒は飲むし、肉も食べるし、イスラム圏では世俗的な国。大統領制でファーストレディーが活躍している。経済的には、石油、天然ガスがあり成長率も2.2%と順調。衛星を保有など宇宙開発に力を入れている。

 外交的に大きな問題は、1995年から隣国のアルメニアに国土の20%を占領されている。観光面では、歴史的建造物があり、ワインや料理も評判がいい。キャビアも名物となっている」

 アゼルバイジャンから見た日本。「ソ連占領時代から、石川啄木や映画監督の黒沢明は人気があった。独立後、外交ではヨーロッパより東アジアに向いており、勤勉な日本への関心は中国や韓国、マレーシアに比べて強い。

 日本にも、アゼルバイジャンと同じく占領問題を抱えているが、領土問題で妥協はあってはならない。女性の登用は、政治家、外交官、医者などに女性が多い。政治への関心は強く大統領選の投票率は97%。原発再稼働など日本の政治家は外国と比較して国民にもっと説明しないとだめだ」

 講演のあと、質疑応答となった。「大統領の世襲はありますか?」、「アゼルバイジャンと日本の市民レベルの交流を」、「アルメニアの占領の行方」などの質問に丁寧に答えていた。「日本と宇宙開発、自動車生産、農業などで協力して、お互いに発展していきたい」と今後についても語った。大きな拍手で講演を終えた。

 冒頭の言葉が印象に残っている。「国と国の関係は、人間と人間の関係だと思います。人間関係がうまくいけば、外交もうまくいくと思います。2020年の東京五輪では、海外から来た人に、スポーツ競技だけでなく、観光はもちろん京都や広島の文化や歴史を見せるようにしてほしい」

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