都民塾

都民塾だより No.29

 第29回都民塾(呼び掛け人 立石晴康・東京都議会議員)が、平成27年6月18日午後7時から中央区の築地本願寺講堂で、東京都港区前区長で明治大学公共政策大学院講師の原田敬美先生を招いて開かれた。テーマは、「震災復興(コジャエリ市の例)と2030年東京の街づくり」。

 原田先生は、都市政策研究所長国際建築アカデミー客員教授(ブルガリア)などを務め、日本の震災復興計画の第一人者。このほど、16年前に大震災(死者2万人余)が起こったトルコ第2の都市「コジャエリ市」で講演して帰国したばかり。

 原田先生は、「これからの日本の震災対策(安全・安心の街づくり)」から話し出した。1999年のトルコ地震、1994年の米ロス地震や1995年の日本の阪神淡路大地震などのデータを基に、地域の防災力について話した。

 「政府見解では、30年以内にM7の地震が起こる可能性は70%で、死者1万1千人、被害額112兆円と予想される。阪神淡路大震災では、瓦礫の中から救助されたのが3万5千人、このうち自衛隊・警察・消防で救助が8千人、家族や近隣住民が2万7千人。地域の防災力は、自助、共助、公助の3つの力が大きい」

 日本人の特性に触れ、「日本人は危機対応に不慣れだ。都心、港区では8割がマンション住まいで、大震災では帰宅難民100万人の世話が必要になる。災害時における大都市の課題は多く、素早い対応策が求められる」とロス地震に触れた。「ロスでは、市長がすぐに非常事態宣言を出し、州も州兵1500人を派遣、連邦政府も素早く対応。M6.6だったが、死者55人、火災30~50件で済んだ」

 「2030年 東京の街づくり」については、最初に、「成熟した価値観を理解し合い、生活多様性社会」と定義付けたいと述べ、自身が留学したスエーデンでの生活を語った。「1971年に留学したが、敷金礼金なしでスーツケース一つで中央駅近くのアパートに安価で住めた。研修の仕事の時給もよく、留学生を高待遇で受け入れる素地があった。文化・芸術などの仕事に就く人びとの給与も高い」

 「米国留学では、テキサス州にあるメディカルセンターが印象に残っている。センター内には30もの病院があり、欧米から専門医を招請して世界中から来るお金持ちの患者の手術をする。日本の医療も参考にすべきだし、東京に必要だ」

 2030年の東京に求められるのは、①留学生を増やす②国際的な医療センターの設置③世界からの観光客を増やす、こと。「そのために、留学生の住宅供与、文化・芸術・学術への経済的支援と発表の場、コンクール開催などが必要」と述べた。

 築地市場の再開発については、ニューヨーク、ロンドン、パリの市場の再開発を詳しく報告、「2030年に向けて現代の変化に伴う土地利用が大事で、観光、ウオーターフロント、地下鉄駅の改造といった面からも考えるべきだ」と述べた。

 いずれも、関心の高いテーマだけに80人の出席者は熱心に耳を傾けた。講演後は、2020年東京五輪で晴海にできる選手村の再利用、大震災のさいのコミュニティーの在り方、直下型地震への対応などに質問が相次いだ。

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