都民塾

都民塾だより No.38

 第38回都民塾(呼び掛け人 立石晴康・東京都議会議員)が、平成28年6月22日(水)午後7時から中央区の築地本願寺講堂で、日本輸出入銀行を経て世界経済を現場で見てきた麗澤大学経済学部特任教授の真殿 達(まどの さとる)先生を招いて「どうなる アベノミクス」をテーマに開かれた。

 真殿先生は、早稲田大学第一政治経済学部経済学科卒業、シカゴ大学大学院社会科学部門国際関係論修士課程修了。日本輸出入銀行・国際協力銀行プロジェクトファイナンス部長などを歴任。著書も『国際ビジネスファイナンス』など多数。

 3年半前のアベノミクスの離陸から話を始めた。「安倍首相は運がいいと思う。円高から円安に向かい、アメリカもリーマンショックから立ち直り景気が良くなってきたときに就任した」そして、この3年間を振り返った。

 「財政出動により円安を実現、輸出産業は潤った。批判を封じ、株価への介入もあった。結果として労働者不足の潜在化を招いた。財政出動と金融緩和は痛みを伴う構造改革につなぐ短期的措置だが、この3年間、構造改革はしなかった」

 3年前に書いた自身のレポート「アベノミクスと国際環境」に触れ、「デフレ脱却には、お金を持つ高齢者が安心してお金を使えるようにすることも肝要。労働力不足は、ブルーカラーが足りずホワイトカラーは余っている。このように企業には無駄が多い。安倍首相に、きちんとした正しい情報が入らないのも問題だ」

 先の伊勢志摩サミットに言及した。「安倍首相の財政出動を、という意見にドイツとアメリカは賛成しなかった。消費増税の先延ばしも見透かされた。中国の過剰な鉄鋼生産、情報通信問題、イギリスのEU離脱などをもっと論議すべきだった。参加国は、日本は今後どうする気だろうと首を傾げたのではないか」

 アベノミクスの今後に及んだ。「日本は少子高齢化が進み人口は増えない。経済は、TPP交渉やシャープ、東芝、三菱自動車など経団連企業の不始末など変わりつつあるが、三菱東京UFJのPD返上など国際市場の圧力で、第1と第2の矢を継続するか、軌道修正するかアベノミクスは二者択一が迫られている」

 「ともかく、経済構造を変える必要がある」と強調した。「物を売ることからシステム、ソリューションを売る産業への転換、東芝、三菱自動車の問題に潜在化した情報公開の遅れの打破、大学を自由な研究のできるようにするなど人材の育成、女性の登用といった雇用問題の解決などが求められる」

 最後を、国際関係の問題で締めくくった。「日米関係では親日の若い米国の学者をつくるべき。日中・日韓関係は、お互いの違いを堂々言い合えるようにすべき。アジアの親日国との関係はもっと強めていくべき。ロシアとはいまの日米関係がある中では北方領土返還は難しい。米国とヨーロッパの関係冷却化も心配だ」

 質疑応答では、プロジェクトファイナンス問題で盛り上がった。難しいテーマの講演だったが、90人の出席者は最後まで熱心に耳を傾けていた。

戻る