都民塾

都民塾だより No.77

 第77回都民塾(呼び掛け人 立石晴康前東京都議会議員)が、令和元年12月19日(木)午後6時半から中央区の築地本願寺第一伝道会館内の振風道場で開かれた。

 講師を務めてくださったのは、東京新聞編集局社会部記者の鷲野史彦氏。鷲野氏は2018年10月より同紙で始まった調査報道キャンペーン『税を追う』の取材班キャップ。税の流れを追い、無駄遣いや政官財の癒着や利権を明らかにすることで、国や社会の仕組みを読者に考えてもらうことが目的だという。

 調査報道で明らかになった多くの事実から、今回は「兵器を買わされる日本と薬の真相」と題して講演をしてくださった。まず鷲野氏は、第62回都民塾で講師を務め好評を博した同僚の望月衣塑子氏を引き合いに「彼女と比べ喋りは10倍下手だけど、原稿は10倍上手い」と会場を笑わせて講演スタート。

 我が国の防衛費の後年度負担は、2012年に発足した第二次安倍政権下で右肩上がりに増え続け、本年度は予算ベースで5兆3613億円と、わずか6年間で一気に2兆1305億円も増えたとグラフを示して解説。そのうえで防衛省が兵器を購入した相手先が、国内企業ではなく米国政府がトップであることを指摘し、問題点を明らかにしてくれた。

 米国から購入する兵器はいずれも高額で、いわば「高級車やマンションを購入するときと同じでローンを抱えます」と鷲野氏。つまり初期契約から完済までの間、多くの税金が米国に流れることになる。ついにはこの“兵器ローン”(後年度負担)が防衛予算を圧迫する事態に至り、総じて財政健全化を妨げる要因ともなっている。

 この自転車操業により、日本を取り巻く厳しい国際環境下「日本の防衛はどうあるべきか」との議論がおざなりにされてきたと鷲野氏は言う。トランプ氏のご機嫌を取るため、「何でもいいから買っておけ」との姿勢でいいのか、ということである。政権のこの姿は「自動車関税を上げさせないことが安倍政権の至上命令」との経産省幹部の証言とシンクロする。

 国民の命に直結する国防費=税金の使い方と共に、鷲野氏が指摘したのが同じく命に係わる医療費43兆円のうち10兆円を占める薬代についてだった。かかりつけ医が処方してくれる薬は、効果と安全面で本当に最良なのか、と多くの人が抱く疑問に答える形で取材が始まったという。

 長い年月をかけて開発される新薬は、市場価値を維持できるのは特許の効力が生きている8~10年と言われる。そのため製薬会社は新薬を高く売れるうちに売ろうと画策する。戦略は医師500人以上が参加する講演会を、年に何回も開くことだという。お医者さんに周知してもらう講演会の費用総額は、日本製薬工業協会に加盟する71社だけで1500億円にも及ぶというから驚きだ。

 全国にお医者さんは32万人いるが、講演会で新薬の宣伝に協力し100万円以上の謝金を得る人は約1000人。こうなると薬価が本当に適切なのか、著名な医師が薬や病気につきメディアで語る内容は果たして信じられるのか疑問に思えてくる。税金の使い道にせよ、医師の選択にせよ、結局は私たち一人ひとりが自分でチェックすべきことだと学んだ講演だった。

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