都民塾

都民塾だより No.80

 第80回都民塾(呼び掛け人 立石晴康前東京都議会議員)が、令和二年6月23日(火)午後6時半から中央区の築地本願寺・第二伝道会館『瑞鳳の間』で開かれた。記念すべき区切りの回だったが、新型コロナウイルス禍の影響を受け、異例ずくめの塾内容になった。

 まず全体の構成が1時間に短縮され、会場左右の窓を全開して風通しを良くし、受講者の椅子は充分に間隔を取って置かれ、講師の席には「飛散防止パネル(株式会社 台和提供)」が設置された。会場入り口では、入場者全員にマスクも配られたのである。

 講演のテーマも『政府や関係機関における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応』。東京新聞社会部記者・藤川大樹氏が講師を務めてくださった。藤川氏は日本がコロナ禍で騒然とするまで国税庁担当だったが、今や “コロナ専属”です、と苦笑い。

 昨年12月中国・武漢で発生したこの不気味な疫病が日本を席巻し、ようやく小休止する今日まで、ご自身が取材を通して立ち会ってきたシーンを報告してくださった。まるでドキュメンタリー映画を観るように、日本における対策の経緯が❶~❺のエピソード毎に紹介されると、その一つひとつが鮮明に思い出され、会場は息を呑むような緊張感に包まれた。

 今年1月31日WHOが「緊急事態」を宣言したが、この時点では多くの人が事態を楽観視していたという。慌て出したのは、豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号で感染が拡大し、2月4日より始まった船内隔離〈❶〉からだったと藤川氏。隔離対策は日本の縦割り行政の弊害が可視化されたような内実で、指揮系統がぐちゃぐちゃだったと言う。

 続いて印象深い2月27日の安倍首相による突然の一斉休校〈❷〉。文部科学省には何の相談もなく省内はパニックになったと言うが、そもそも法的には休校を決める権限がないと聞いて会場は一様にビックリ。

 続く3月24日に決定したオリパラ延期〈❸〉。少し前まで周囲は「やる気満々」だったという。これを受け、それまで何故か静かだった小池都知事から翌25日に発せられた「感染拡大 重大局面」〈❹〉は、政府による「緊急事態宣言」〈❺〉の発出が期待された。

 藤川氏によると医療関係者は「出すべきだ」との立場だったが、政府は「経済は止められない」とのスタンスから逡巡、この綱引きはしばらく続いたという。しかし周囲の圧力が日増しに強くなり、とうとう4月7日に宣言を7都府県に、16日には対象を全国に拡大した。

 この緊急事態宣言が必要だったか、効果があったかは「検証が必要」と藤川氏。実際に小売や外食産業などの落ち込みは酷かったが、一方でGAFAMと言われるグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフトの5社は、東証一部上場企業すべての時価総額を上回ったと言う。もしかしたら宣言は、社会の分断を助長させたのかもしれない。

 今後の問題はどう第二波、第三波に備えるか、どうしたら収束させられ、その有効手段ワクチンの開発はどんな段階にあるのかだ。世界的に見て日本の死亡率は低く、抗体保有者も少ないと考えられる。国民の6~8割が自然感染することにより抗体を保有し、感染者を減らすという集団免疫は難しいことになる。従って集団感染による収束は期待薄。

 となると希望は世界中でワクチン開発競争が始まっていることだが、社会に遍く行き渡るには2年近くかかる可能性があるという。それまで私たちは、あらゆる科学的知見を学び、英知を結集してこの難局に立ち向かうことが、後世への責任だということになる。

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