都民塾

都民塾だより No.81

 第81回都民塾(呼び掛け人 立石晴康前東京都議会議員)が、令和二年7月22日(水)午後6時半から中央区の築地本願寺・第二伝道会館『瑞鳳の間』で開かれた。

 今回もコロナ禍の日常に配慮し、会場左右の窓を全開、受講者の椅子は充分に間隔を保って置かれ、講師席には飛散防止パネルが設置された。会場入り口には、消毒スプレーも置かれたのである。


 その新型コロナウイルスの感染拡大という不幸に乗じて、自国の覇権を拡大しようとしている国がある、という刺激的な話で講演を始めてくれたのが、元防衛大学教授・新治 毅氏であった。講演テーマ『戦後70年の真実─太平洋戦争を始めたのはアメリカであった』のいわば前振りであったが、史実と現在がどう結びつくというのか?

 新治氏は耳慣れない「超限戦」という言葉から話を起こしてくれた。これは中国人民解放軍人による命名の、グローバル時代の戦争の形。通常戦、外交戦に加え、テロ、金融、ネット、メディアを駆使した戦争であり、そこには化学・生物兵器も使われる。

 中国政府は自国由来のウイルスが、人への感染が起きている事実を3週間以上も隠蔽した。そればかりかこの間、マスクなどの医療物資を海外から大量に買い占める一方、輸出量を大幅に減らして備蓄したという。どうして日本には、こんな厄介な隣人が生まれたのか?


 ここから新治氏は本題に入る。それはすなわち、太平洋戦争とは何であったのか、という日本人なら避けて通れない命題に対峙することになる。思えば日本は長らく「戦勝国史観」の呪縛に囚われてきた。日本の軍部が暴走して隣国を侵略し、国民を欺き無謀な戦争に突入し、原爆投下などにより多くの非戦闘員の命が奪われた──。

   この見方が正当か否かは国論を二分してきたが、新治氏は講演で、判断基準となるエビデンスを示してくれた。それは第31代米国大統領ハーバート・フーバーが著した『裏切られた自由』。フーバーが20年の歳月をかけて完成させた、957頁に及ぶ第二次大戦の回顧録だが、2011年にフーバー研究所から刊行されると世界に大きな反響を巻き起こした。


 新治氏の解説によると、フーバーは膨大な歴史資料を収集、戦時下に第32代米国大統領であったフランクリン・ルーズベルトの“大罪”を暴いている。それによるとルーズベルトは、ニューディール政策の失敗を糊塗すること、戦時特需により重工業を復活させ景気浮揚を図ることから戦争を強く望んでいた。しかし大統領選の公約は「欧州の戦争には非介入」。

 そのため権謀術数を駆使し、日本を戦争に引きずり込もうとした。座視すれば日本国の破滅にしかならない経済封鎖を仕掛け、日本の和平交渉を無視し続けた。これらの挑発行為により日本は真珠湾攻撃になだれ込んだのだが、これすら暗号解読技術で把握していたルーズベルトは、ハワイの米軍司令官には知らせず、同胞の命を犠牲にしたのである。


 日本の「騙し討ち」に激高した米国世論は対日参戦を望み、ルーズベルトは望み通り戦争に加担する。だがルーズベルトの一連の策略において最も罪深いのは、蒋介石やスターリンに莫大な軍事援助を与え、共産主義を拡大させ、その後の世界にさまざまな禍根の種をまいたことである。戦後、封印されてきた歴史の真実が私たちの前にさらされたとき、今日の新型コロナウイルスのパンデミックも偶然でなかったと知ることのできた講演だった。

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