都民塾

都民塾だより No.86

 第86回都民塾(塾長 立石晴康元東京都議、代表世話人 野口和久)が、令和3年7月9日(金)午後6時半から、東京・中央区の築地本願寺2階講堂で、森美術館(東京・六本木)館長の片岡真実(かたおか・まみ)さんを講師に招き「生きるためのエネルギー差し上げます 現代アートの力」をテーマに開かれた。

 片岡さんは、1965年、愛知県名古屋市で生まれ。1988年に愛知教育大学美術科を卒業、1997年から東京オペラシティアートギャラリー・チーフキュレーターを経て、2003年に森美術館に入り、2020年1月から館長を務める。2012年には第9回光州ビエンナーレ共同芸術監督、2022年に開催予定の国際芸術祭「あいち2022」の女性初の芸術監督を務める。

 片岡さんは「現代アート」の説明から入った。「英訳するとコンテンポラリーアート、同時代にいる、です。一般的には1945年以降のアートを呼びますが。1960年代、新しい動きが出てきてから、1989年に冷戦が崩壊してアートが変わってからを指す向きもあります」

 「19世紀末、フランス人で、現代アートの父、マルセル・デュシャンが、レディ・メード(既製品)をそのまま作品として展示。男性用小便器に「泉」というタイトルを他人のサインまで入れた。アートは技術でなく考え方という新しい概念が生まれた」

 アートのマーケットや施設などの話を続けた。「マーケットを支えるのは絵画で9割を占める。コレクターの多くは商業ギャラリーで購入、ビエンナーレやトリエンナーレで展示される作品は(大きくて)売れない。世界各地で国際展の開催や美術館の数も増えている」

 国際芸術祭「あいち2022」を説明。「テーマ『STILL ALIVE(いまだ生きている)』は、愛知県出身のアーティスト、河原温が、1970年代以降、電報で自身の生存を発信し続けたI AM STILL ALIVEシリーズに着想を得ています。この『STILL ALIVE』を多角的に解釈し、過去、現在、未来という時間軸を往来しながら、愛知県の誇る歴史、地場産業、伝統文化の再発見、生きることの根源的な意味などを考えます」

 また、森美術館で開催中の「アナザーエナジー展」(9月26日まで)を紹介。戦後動乱期の1950年代から1970年代にかけて活動を始め、2021年の現在に至るまで世界各地で制作活動を続ける女性アーティスト16人の作品を紹介しながら光を当てた。

 「年齢は71歳から105歳まで、彼女たちの50年以上におよぶキャリアを、初期作品から代表作、本展のための新作まで多角的に紹介。アーティスト16人の出身地、現在の活動拠点、表現方法、さらに生き方は実に多様です。各アーティストの実践や人生を通して、フェミニズム、移民の歴史など、世界の問題や数々の事象が見えてきます」

 こうまとめた。「現代アートの背景にある歴史などをひもとき、そこからエネルギーをもらいながら生きていくというのはどうでしょうか。年齢や性別、会社の役職など関係なく皆さんはアイデアを持っています。アイデアにはヒエラルキーはありません」

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