都民塾

都民塾だより No.90

 第90回都民塾(塾長 立石晴康元東京都議、代表世話人 野口和久)が、令和4年3月28日(月)午後6時半から、東京・中央区の築地本願寺2階講堂で、元ウクライナ大使の角茂樹さんを講師に招き、「ウクライナ危機 ウクライナ国民は何を望んでいるのか」をテーマに開かれ、出席者は角さんの講演に熱心に耳を傾けた。

 角さんは、1977 年、一橋大学商学部卒業。同年、外務省に入省。国連日本政府代表部一等書記官。ウィーン国際機関日本政府代表部大使を経て、2008 年から国連大使。2014 年から駐ウクライナ特命全権大使を務め、在任中、東部・紛争地帯を年に4~5回視察した。

  角さんは、首都キエフにある大修道院、宮殿、大聖堂などの歴史や役割、ボルシチやコサックの発祥地がウクライナだったこと、キエフ公国がモスクワ公国より歴史があること、など「ウクライナンはどういう国か」から話し出し、今回のロシアの侵攻の話に入った。

 ロシアの侵攻の背景について「(現近代においては)第一次大戦で、ウクライナの4分の3がソ連領となったが大飢饉が起き、400万人が死んだ。1991年にソ連邦から独立。第二次大戦の独ソ戦では最初ドイツにつき、ヒトラーが敗れるとソ連と戦った。大飢饉の話はタブーで、当時のバンデラ大統領を英雄扱いしているのもロシアは許せなかった」

 ロシアとの関係だが、「ウクライナは、2014年に大きく変わった。クリミア併合、ドンバス問題が起き、親ロシアの地域にロシアが侵攻してきて多くの人を殺し、それまであったロシアへの信頼をなくした。それは、大統領選挙の結果を見ればわかる。

 2014年の大統領選では、親ロシアと親西欧が真っ二つに割れたが、2019年の大統領選では親西欧の2人(ポロシェンコとゼレンスキー)の争いになった。国民の多くが、GDPが韓国並みで自由もないロシアより、豊かで自由のある西欧に親近感を抱いた」

 今回のロシアの軍事進攻について「プーチン大統領は簡単にキエフを攻略して傀儡政権を作れると思っていた。しかし、彼の大ロシア構想、ウクライナ人の愛国心、ウクライナは弱いという先入観など間違った信念に狂いが生じた」。なぜ、ロシアは難儀しているのか?

 「ウクライナとの土地は肥沃で、戦車は絡まって走れず、トラックに乗せて移動せざるを得ない。2月14日のキエフのミサイル攻撃で、国民は恐れおののいたが『ロシアは絶対、許せない』という愛国心とロシアへの憎しみが強まった。西側の経済制裁、国連の決議に141カ国が賛同するなど国際的世論もロシアにノーを突き付けた」。今後だが…。

 「ロシアが苦戦から脱するには、本来の目標を下げるか、毒ガスや核兵器など禁じ手を使うか。国営テレビで女子が反戦のプラカードで登場したり、一般市民や宗教界にも反プーチンの動きがある。ロシア国内の動きがどうなるか、プーチンの鉄のグリップが揺らいでいるのは確かだ」。講演後の質疑応答は盛り上がり、ウクライナ支援募金も行われた。

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