都民塾

都民塾だより No.94

 第94回都民塾(塾長 立石晴康元東京都議、代表世話人 野口和久)が、令和4年10月20日(木)午後6時半から、東京・中央区の築地本願寺2階講堂で、元 JOC 職員・スポーツコンサルタントの春日良一氏を講師に招き、「五輪汚職の核心とオリンピック・ムーブメント(運動)の理想」をテーマに開かれ、出席者は熱心に聞き入った。

 春日氏は、1955 年生まれ。長野県出身。上智大学哲学科卒。日本体育協会、JOC(日本オリンピック委員会)を経て、1995 年独立。スポーツコンサルティング会社『ゲンキなアトリエ』を設立。スポーツイベントのプロデュース、アスリートサポートなどを手掛けている。

 五輪汚職で逮捕された高橋治之容疑者の暗躍ぶりから話し出した。「元電通専務として東京五輪組織委員会に出向していた多くの電通職員に威圧感を与えていた。自分の人脈の中でスポンサーを見つけ、本来、仲介するする必要がないところに高橋容疑者が入り込み、対価として賄賂を受け取った。彼は、世界サッカーのプロデュースから力をつけていった」

 IOC(国際オリンピック委員会)の組織について「五輪は3本柱から成り立っている。IFという国際競技連盟、NOCという五輪を統括する組織、そして五輪全体を統括するIOC。私は、IOCの政治力を、長野五輪(1998 年)招致の参事として関与しており、そこで体感した」

 「オリンピック・ムーブメント(運動)が目指しているもの」に言及。「五輪憲章にあるように、五輪運動はスポーツでより平和な世界を構築。これを五大陸に広めていく運動。そこには、自律と政治的中立が求められる。しかし、現実は、中国やロシアの権威主義的国家と西欧の民主主義国家が対立しており、いかに自律と政治的中立を保つかが課題です」

 春日氏は、東京 2020 開催をワイドショウ等で主張した。「私は4年に一度しか開催しない五輪に参加する選手のことを考え開催を主張した。私に届いたメールには『運動会は止めるのに五輪は開催するのか』というのがあったのには驚いた。命を懸けても開催する意義があると思っていたが、無観客の開催で、その意義がしぼんだ気がする」

 五輪が商業主義と言われることついて「1980年のモスクワ五輪がソ連のアフガン侵略で西側がボイコット、政治的力で開催できなかった。政治力に勝つためIOCのサマランチ会長は五輪のシンボルを1業種1社に絞って売った。その収益の90%を世界中の選手や競技団体に分配している。これを商業主義と言うのだろうか」と疑問を投げかけた。

 日本体育協会、JOC(日本オリンピック委員会)、五輪大会組織委員会の違いについて解説するなかで、「組織委員会は本来、東京都とJOCが運営すべきだが、今回は政治=文科省が入ったことで五輪汚職は起きた、ともいえる」と述べた。

 最後に、「スポーツ王国の理想は日本の憲法9条と重なる。武器を捨ててオリンピアを目指すということから、自衛隊をスポーツ王国の防衛軍にしたらどうか」と提案した。講演後の質疑応答も多くの質問が飛び出し、大いに盛り上がった。

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