都民塾

都民塾だより No.95

 第95回都民塾(塾長 立石晴康元東京都議、代表世話人 野口和久)が、令和4年11月24日(木)午後6時半から、東京・中央区の築地本願寺2階講堂で、産経新聞東京編集局 社会部デスク・前 NY 支局特派員の上塚真由さんを講師に招き、「この目で見た米国の『対立と分断』、そして民主主義の現在地」をテーマに開かれ、出席者は熱心に聞き入った。

 上塚さんは、兵庫県出身。2000 年産経新聞社入社。さいたま、甲府支局で勤務の後、東京本社文化部で学芸欄。社会部に異動し司法・検察取材を担当の後、12 年から 1 年間、ニューヨーク大学法科大学院に客員研究員として留学。16 年 5 月からニューヨーク(NY)支局で特派員として勤務、大統領選取材を二度経験。21 年 4 月に帰国し現在に至る。

 上塚さんは、現在の社会部デスクの仕事から切り出した。「現場の記者に指示を出したり、原稿のチエックをしています。社会部の仕事は幅広く、あらゆる事件や事故、災害などの仕事を担当、現在、ポストコロナや旧統一協会問題が重要なテーマになっています」

 続いて、2016年から5年間の特派員勤務で接した米国の素顔を話し、中間選挙を総括。「日本でも注目された米国の中間選挙は、大統領任期の半期が通過した時点で投票が行われるため『通信簿』と言われています。連邦上下院議員の改選に合わせ36州の知事選も行われました。今回の争点は人口妊娠中絶とインフレ対策でしたが、隠された争点はトランプ前大統領が選挙結果をうけいれるかどうか、でした。共和党有利で選挙に突入しました」

 選挙結果は、下院を共和党が、民主党が上院を押さえバイデン民主党が善戦。2024年の大統領選挙の前哨戦だった。「トランプ陣営の敗北は、彼が候補者に金銭的支援をしなかったことや候補者が悪いと言ったりしたことだと言われています。彼には有権者の約3割を占めるといわれる岩盤支持層があります。今回は人工妊娠中絶で若者が民主党支持に回ったのが大きい」

 NY勤務で取材した2017年のバージニア州シャーロックビル事件が、昨年1月のトランプ支持者による連邦議会議事堂襲撃事件の源流だと話した。「白人至上主義者らの集会に抗議するデモ隊に車が突っ込み、女性1人が死亡、19人が負傷した。取材現場で身の危険を感じました。進学・就職で黒人が優遇され、いずれ白人が過半数を割り、マイノリティー(人種的少数派)に米国が乗っ取られるという危機感が米国を分断させ、民主主義の危機が叫ばれるようになりました」

 陰謀論にも言及した。「陰謀主義のQアノンにインタビューしたが、彼らはエスタブリシュメントやメディアを嫌い、世の中に不満を思っている。トランプが負けたさい『票が盗まれた』と結果を認めていない。トランプ大統領時代に支持者が広がった」

 2016年のトランプ大統領が誕生した大統領選挙を振り返り、「トランプ氏は白人労働者の心をつかんだ。彼らの親の世代は自宅を建て、車も2台持てた。格差が激しい今の時代、白人労働者はトランプの唱える『偉大なアメリカ』の政策に共鳴した。彼の人気の源泉は、巧みな弁舌にある」。講演後の質疑応答では多くの質問が飛び出して盛り上がった。

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