都民塾

都民塾だより No.97

 第97回都民塾(名誉塾長 立石晴康元東京都議、代表世話人 野口和久)が、令和5年2月21日(火)午後6時半から、東京・中央区の築地本願寺2階講堂で、東短リサーチ株式会社・代表取締役社長、チーフエコノミストの加藤 出先生を講師に招き、「黒田東彦総裁の退任後、新たな日銀の金融政策と日本経済を予測する」をテーマに開かれた。

 加藤先生は、1988 年横浜国立大学経済学部卒、東京短資入社。97 年より東短リサーチ研究員兼務。2002 年同社取締役、13 年より現職。NY(02)、ロンドン(10)、上海(11)に駐在。テレビ東京「モーニング・サテライト」、BS・TBS「Biz スクエア」などに定期出演。日経、朝日新聞、週刊ダイヤモンドなどに寄稿多数。著書に『日銀「出口」なし!』など多数。

 加藤先生は、食堂「大戸屋」の「しまほっけの炭火焼定食」のニューヨーク(NY)と日本の価格比較から話し始めた。「NYは5526円に対して日本は1000円と5.5倍です。2018年にはNYは3150円で3.3倍でした。原因は何でしょうか」と原因に言及した。

 「ひとつは、日銀の金融政策の超円安です。昨年から日本と海外の金利が開いてきた。そこで、日銀は金利を抑え込むため国債を爆買い、お金が金融市場に配られた。二つ目の原因は、NYでは、レストランなどで高い値付けが可能で、賃金の伸びが日米で大きく異なること。海外は給料が増えると物価も上がるが、日本は給料は増えず実質所得も増えていない」

 続いて、日銀の設立経緯、日銀法における日銀の目的、日銀が行う最も基本的な金融政策=短期金利操作、短期金利をゼロ%近辺まで下げたら中央銀行=日銀はその後どうするか、などについて詳しく説明した。

 アベノミクスについては「2013年から黒田総裁の日銀は空前の勢いで国債やETFを大規模購入する“異次元緩和策”を実施。日銀資産の経済規模比(名目GDP比)は、海外中央銀行を遥かに超える水準に上昇した」と、この背景にあった“処方箋”を説明。この結果、「先進国5年毎の累積実質GDP成長率は、2012年までの5年間は21位だったが、2022年までの5年間では32位と最下位になった。

 このあと、「超金融緩和では“治療”できない日本の構造問題」を解説、デジタル化の波に乗れない日本経済、上田和男総裁の日銀新体制の金融政策、日銀・金融政策正常化の長期ロードアップ・イメージについて説明、次のように締めくくった。

 「資源のないわが国でありながら、明治期の急速な工業化推進、第二次大戦後の奇跡の成長が実現できたのは、時代にマッチした教育水準の高さが主因。経済成長の最大の牽引力は、実は『教育』で、日本に改善余地はあるはずだ。そのためには、将来不安を高めずに競争力を向上させる北欧型フレキシキュリティ(柔軟性+保障)ではないか」

 この日は、昨年12月の立石晴康名誉塾長の逝去から初めての都民塾で、冒頭、出席者全員による黙禱が行われた。

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