都民塾

都民塾だより No.98

 第98回都民塾(名誉塾長 故立石晴康元東京都議、代表世話人 野口和久)が、令和5年 3月14日(火)午後6時半から、東京・中央区の築地本願寺2階講堂で、航空評論家・危機管理専門家・元日本航空機長の小林宏之先生を講師に招き、「90年代の『湾岸戦争』時の民間支援から学んだ危機管理の要諦」をテーマに開かれた。

 小林先生は、愛知県新城市出身。1968年5月、日本航空株式会社入社。乗務した路線は、JAL運行の全ての国際線と主な国内線。総飛行時間18,500時間。2010年3月退職後、危機管理・リスクマネジメントの講師、原子力安全セーフティーボードの一員として活躍する傍ら、航空評論家としても活躍。TV・ラジオなど出演も多数。

 小林先生は、宇宙飛行士の若田光一さんとの交流を話したあと、パイロットとして操縦席か ら地球を見て思ったことから話し出した。「かけがえのない地球の美しさ、かけがえのない人 生の大切さ、かけがえのない家族を想いました。かけがえのない、という言葉を大事にしたい」

 湾岸戦争は、1990 年8月、石油利権がらみで、イラクがクウェートに侵攻してはじまった。 日本人がイラクに人質に取られた。「私は事前調査で現地入りしたが、自動小銃でチエックされた。自衛隊機が邦人救出に貢献したが、日本からペルシャ湾までの航路は私が説明しました」

 危機管理については、映画にもなった「ハドソン川の奇跡」を引用して説明した。「予定していたラガーディア空港に着陸できず、ほかの空港も着陸困難になり、ハドソン川に緊急着水して乗客 155 人の命を救った。機長は管制官の指示を落ちついて聞いて対応した。航空機をコンこう続けた。「危機管理は、生死・存続の分かれ目の際の決断です。危機管理も健康管理も自己コントロールが要諦です。会社などの組織においては、危機の際、トップが落ち着き、意識してゆっくり話すと部下も安心して落ち着いて対応できます」トロールする前に自分をコントロールしました。この機長の決断は高く評価したい」

 トップやリーダーに不可欠な条件として①持続する強い目的意識②決断力③コミュニケーション力④理性と感性のバランス⑤元気で明るいことの5つをあげて「自己コントロールは危機管理、健康管理に欠かせません」と強調した。

 アメリカ人も読んでいるという宮本武蔵の『五輪書』にある「神仏を尊び、神仏に頼らず」という言葉は「謙虚心と自律心」を示すとしたうえで、「謙虚心は、会社においては、新人にはあるが、中堅、ベテランは気を付けないといけない。自律心は自己責任・自助努力で『自分・自社以外は原因でなく条件なのだ』ということを忘れないでほしい」

 最後に「人生 100 年時代の生き方は『いつだって旬(しゅん)』という心がけが大事です。私は操縦席から『21 世紀は紛争のない世紀でありたい』とアナウンスしてきましたが、『かけがえのない』という言葉を大切にしたい」と結んだ。

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