日本橋徒然草

日本橋徒然草 NO.6 小さな旅

令和2年3月22日 立石晴康

 私は日本橋村松町、現在の東日本橋一丁目に長く住んでいますが、旅が好きで、これまで世界の国々を70カ国前後まわってきました。国内も、沖縄から北海道までいろいろな場所を旅してきました。最近は近くの場所のことを意外と知らないなと気付いて、小さな旅を心掛けています。

 先日、家のそばの浅草線東日本橋から五反田をこえて戸越に行きました。戸越銀座という商店街の名前はよく耳にしていましたが行ったことはありませんでした。知らないところを訪ねることはやはり楽しく、このワクワク感は、例えば初めて訪ねた冬のニューヨークのワクワク感とそう変わらないものです。 戸越銀座には生活の香りがあり、人々の顔が見える素晴らしい商店街でした。

 妻のしげ子が我が家の仏壇の灯明に付けるマッチが切れたので「柄の長いライターがほしい」と言い、それは多分文房具屋さんにあるのではないかと思ったので、文房具屋さんに入り「ライターはありますか」と声を掛けました。そこのご主人と思われる女性が「前の金物屋さんにあるはずですよ」と親切に口添えしてくれました。

 そこで今度は金物屋さんに行くと、店いっぱいにやかん、鍋など所狭しと置かれ、4、5人の女性がいました。どの方がお店の人かお客さんか分からないので、オロオロして、誰とはなしに尋ねたら、「もうすぐお店の方が来ますよ」とご婦人が教えてくれ、「奥さん、お客さんよ」と店の奥に助け舟を出してくれました。

 「これで如何ですか」と、なかから手頃なライターを持ってきてくれました。「これで結構です。おいくらですか」「ライターのボンベは入れ替えることはできますか」などの質問にも丁寧に答えてくれました。妻は大喜びで財布からお金を出すと、お店の方は売り上げの籠に入れました。人と会話ができて、とても和やかな楽しい気分です。

 しばらく行くと、石焼き芋の美味しい匂いがしました。お腹はあまり減っていませんでしたが、足が止まりました。すでに2、3人が美味しそうに紅あずまを食べています。つられて私も買ってしまいました。

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