日本橋徒然草

NO.17 にんぶら

令和3年2月 立石晴康

 人形町商店街は戦前、いやもっと昔(明治時代)から、ぎんぶら以上に賑わって、下町の楽しい商店街であったと先輩から聞いています。そのような理由で、「今日はにんぶらに出掛けるよ」と多くの人々がちょうど今銀座に出掛けるように、人形町に出掛けていたそうです。

 人形町を中心として、概ね4km四方の界隈から人力車やリヤカー、大八車を引いた人たちが、この人形町の賑わいを作っていたそうです。

 人形町商店街の一角に老舗の喫茶店の快生軒があります。何回か前にもこの快生軒は日本橋徒然草にも出てきましたが、ちょうど用があって人形町商店街に出て、小春日和の冬にしては珍しい暖かな陽気の中、快生軒の美味しいコーヒーを飲みに行きました。

 店構えは以前と少しも変わらず、ドアのノブを押して店に入りました。ご主人が笑顔で私を迎えてくれました。カフェオレを注文すると、コーヒー豆を挽いて、温かいカフェオレが届きました。テーブルも椅子も、昔と変わらぬ家具が置かれていました。久しぶりにコロナ騒動で巣ごもりしていた私には、こんなに美味しいカフェオレがあるのかなと思えるほどでした。

 コーヒーをいただきながら一休みして、また人形町の商店街に出ますと、何人かの友人に声を掛けられ、楽しい立ち話となりました。現役を引退して肩の荷が下りた私は、この町歩きでお世話になった方々や友人に出会うのは何よりも楽しみです。浅草線の地下鉄人形町駅から日本橋で下車し、デパートを歩いて買い物をして、東日本橋の自宅へ帰りました。

戻る