日本橋徒然草

NO.26 木枯らし

令和3年12月 立石晴康

 「行動すれば希望は必ずついてくる」と私が定期購読している月刊誌致知(ちち)に書いてありました。確かに志を立てて行動すれば、何か希望にあふれたものが必ずついてきたと、79歳の私はそれなりの思いが失敗だらけの人生ながら思い出されてきました。

 いよいよ木枯らしの舞う12月(師走)に入ると、この1年の掉尾として大いに期待しながら身を引き締めて木枯らしの冬を楽しんでいます。秋から冬は日も短く、温度は寒くなる一方です。誰にとっても何か寂しい感じがいたします。日本の四季はこの冬の寒さにじっと耐え、心身を鍛え直す絶好の期間です。やがて春一番と共に滋養強壮を蓄えた芽が力強く地表を蹴破って出てくる春にとって、最も大切な時季ではないかと教わっていました。実りの秋、収穫の秋を終えて、木枯らしの舞う一見厳しい冬こそ、自然界にも土壌にも人生にも最も大切な基礎を築く地盤となると教えてくれています。

 北の北海道では初雪が降り、50cmも積雪しているとテレビやメディアが報道しています。この苦しみを味わいながら、楽しみを見出す事。すなわち苦中楽あり(くちゅうらくあり)と古人は教えています。更に六中観(りくちゅうかん)に、次の5つの格言が表されています。

 意中人あり(いちゅうひとあり)。
 腹中書あり(ふくちゅうしょあり)。
 忙中閑あり(ぼうちゅうかんあり)。
 死中活あり(しちゅうかつあり)。
 壷中天あり(こちゅうてんあり)。

の5つの教えを足して六中観と記憶しています。

 とは言いながら、苦しい時には弱音を吐き、ひたすら消極的に後ろ向きになる私自身であります。1年間、色々な仕事をしてきましたが、あれが足りない、これが足りないと愚痴ばかり言う私自身です。寒い日など一気に暖かい布団から飛び出して起きようと思いながら、寒さに負けてぐずぐずしている朝の私です。

 一方、赤々と燃える囲炉裏に昔の人は集まりながら、美味しいお酒を飲み、鍋物に身体を温めて、冬を楽しむ風景が思い出されます。今は見られなくなりましたが、原っぱで薪を燃やしながら体を温め、美味しいさつまいもを火の中に入れて、待ち遠しく焼き芋のできるのを待つ子供時代の自分を思い出しながら、イチョウの葉が落ちた日本橋浜町公園を散歩する今日この頃です。

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