*第59回都民塾のご報告*

2018年5月24日

第59回都民塾(呼び掛け人 立石晴康前東京都議会議員)が、平成30年5月24日午後67時30分から中央区の築地本願寺講堂で開かれた。
  今回は、新聞・テレビにも登場されるチーフエコノミストの加藤出(かとういずる)先生を招いて「日銀超金融緩和策では解決できない日本経済の課題」をテーマに開催した。
 
加藤先生は、1965年生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。1988年東京短資(株)入社。東短リサーチ(株)代表取締役社長、チーフエコノミスト。「日銀は死んだのか?」(日本経済新聞社)、「東京マネーマーケット」(有斐閣)など著書多数。
 
「世界の名目GDP)をみると、中国が急速に伸ばしており、2年後には日本の3倍を超える。また、1人当たりの実質GDPは、2017年の世界順位では、日本は、92年は17位だったが、17年は30位、額は4位のシンガポールの半分以下。中国は82位とまだまだ低い」と世界における日本の経済規模から話を始めた。
 
  1人当たりの年間労働時間は、「上位3位はメキシコ、コスタリカ、韓国で、日本は21位、ドイツは35位。ドイツ人は有休や病気休暇をキチンととるが、1人当たりの実質GD率は高い。車生産もベンツ、BMWなど高級車で利益率が高い。日本は戦略や企画力が弱いうえ、日本の企業は会議の多さなど無駄が多いのも影響している」
 
国の借金(国債発行残高)では、日本は断トツの1位。「2位のギリシャは、利息の支払いに追われ破綻した。日本は、金利が低く日銀が国債を買い取っており、貯蓄額も多いなどギリシャと異なる」。続いて、リーマンショックから10年について語った。
 
「日本は世界経済回復の恩恵を受けて経済は堅調だが、賃金や物価は上がらない。低金利の長期化で海外ではバブルが発生。サッカー選手の移籍金額や絵画の競売落札額、高級ワインの価格などが急騰、リーマンショック以前のような格差が生じている」
 
過去20年の住宅価格。「北欧やカナダ、ニュージーランドは、人口増と低金利で住宅バブルが起き、日本のバブル期に匹敵する急騰を見せているが、日本は逆に下がっている。日本の課題は、急速に進む高齢化と人口減少にどう対応するかだ」
 
「日本の企業収益は過去最高で、失業率もバブル期以来の低さだが、国民の将来への不安は改善していない。日銀は2013年にインフレ率を2%に引き上げると宣言したが、5年経っても達成は見えていない。この20年間の物価上昇率をみると、欧米は交通料金、外食の値段などサービス価格が200%、700%もアップした品目もあるが、日本は3%~30%アップ。2%のインフレ目標達成には賃金増が必要だが、日銀は直接対処できない。財政は団塊世代が75歳になる2020年はより厳しくなる」
 
世界経済が失速し始めたとき、日本はどうすべきか?「一般会計歳出に占める経費の割合では、社会保障費と国債費が58%を占める。今後、高齢化で増えていく。アメリカでは、『将来世代に国の借金を押し付けるのは不道徳』いう声もある。こうした倫理観が日本にあってもいい。いきなりの破綻はないが、大丈夫ともいえない。中長期的に財政に向き合い、地道にケアしていくしかない」とまとめた。
 
質疑義応答でも日本経済の核心に迫る様々な話を聞くことができた。